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【標準試験】あと施工アンカーの引張試験法・同解説(案)

出典:一般社団法人日本建設あと施工アンカー協会(Japan Construction Anchor Association)

(1)総則

1)目的

本引張試験法(案)(以下、本試験法という)は、普通コンクリーに固着されたあと施工アンカー(以下、アンカーという)単体の固着性能を調べるための標準的な試験方法である。

2)適用範囲

対象とするアンカーは、母材を普通コンクリートとした金属拡張アンカーと接着系アンカーとする。

(2)用語

1)あと施工アンカー

穿孔した母材の孔に固着機能によって固着されるアンカー

2)金属拡張アンカー

固着部に拡張機能を有し予め穿孔された孔の中でアンカーを打込みまたは締め付けることによって拡張部が開き母材に物理的に固着するアンカー

3)接着系アンカー

穿孔した孔をアンカー筋と接着剤で充填して硬化させアンカー筋と母材とを物理的に固着するアンカー

4)へりあき

施工したアンカーの中心から最も近い母材端部までの距離

5)はしあき

アンカー中心から作用応力方向のコンクリート端部までの距離

6)アンカーピッチ

隣り合うアンカーとアンカーの中心間距離。アンカー間隔

7)破壊モード

アンカーの引張試験やせん断試験で、アンカーと母材との一体化が壊れる形態

8)コーン状破壊

アンカーの引張試験において、アンカーが母材を円錐状に破壊する破壊モード

9)アンカー抜け

アンカーの引張試験またはせん断試験で、アンカーが孔から抜ける破壊モード

10)アンカー破断

アンカーの引張試験またはせん断試験で、アンカーが破断する破壊モード

11)付着破壊

接着系アンカーで、コンクリートと接着剤の界面、または接着剤とアンカー筋の界面でアンカー筋が抜ける破壊モード

(3)試験の対象および試験体

1)アンカーのサイズ

本試験法において使用するアンカーのサイズは、M6 からM24、D10 からD25 とする。

2)母材コンクリート

a.対象

普通コンクリートとする。

b.圧縮強度

圧縮強度の範囲は、試験実施時において18 から24 N/mm2 および30 から36 N/mm2 の範囲とする。
圧縮強度の確認は、母材コンクリートと同じ養生条件とした円柱供試体(φ100×200 mm)により、引張試験を実施する材齢と同時に試験を行うものとする。

c.養生

母材コンクリート打込み後、所定の強度に達したことが確認された後にアンカーの施工を行うものとする。
母材コンクリートの養生環境は、原則として常温の室内とする。ただし、屋外の場所で養生を行うものとする場合は、日光の直射、急激な乾燥および寒気に対して適切な養生を行うものとする。

3)試験体

a.形状および寸法

試験体は、母材であるコンクリート供試体(以下、供試体)と固着したアンカーから構成されるものとする。
供試体の形状は原則として矩形とし、亀裂等の生じていない健全な状態のものとする。
供試体の最小厚さは、あと施工アンカーの埋込み長さの2倍もしくは埋込み長さに150 mm を加えた厚さ以上とする。
供試体は、原則無筋コンクリートをとする。

b.製作方法

アンカーの施工は、固着性能に影響を及ぼさない様に相互の干渉あるいは、コンクリートの影響などを排除した、はしあき、へりあきおよびピッチを定めて行うものとする。

c.製作精度

アンカーの傾き角度は、供試体載荷面に対して5度以内とする。

d.試験体数量

5体とする。

(4)試験方法

1)試験装置

試験装置は、載荷装置、荷重計測装置、抜出し量測定装置より構成されるものとする。

a.載荷装置
  1. 載荷装置は、アンカーに引張力を与える加力装置と、その反力を支える反力台から構成される。
  2. 加力装置は、アンカーに対して軸方向に引張力を与えられるような機構とし、想定される最大引張強度を十分上回る加力能力を有し、かつ連続的に引張力を加えられるものとする。
  3. 反力台は、想定される最大引張耐力に対して十分な強度と剛性を有するものとする。
    また、反力台脚部の内法間隔は、アンカーの埋込み長さの2倍以上を原則とする。
b.荷重計測装置
  1. 荷重計測装置は、アンカーに加えられた荷重を正確に測定できるものとする。
  2. 荷重計測装置は、想定される最大引張力を十分上回る容量を持ち、計測装置の精度は±1.5%以内とし、最少読取り値で最大引張荷重の1/20(5%)以下の荷重を計測できるものとする。
c.抜出し量測定装置
  1. 抜出し量測定装置は、アンカーの軸方向の抜出し量を正確に測定できるものとする。
  2. 抜出し量測定装置は、想定される最大抜出し量を十分上回る容量をもち、測定精度が±0.02m以内を有するものとする。
  3. 抜出し量測定装置の固定点は、供試体の変形の影響を受けない位置に設置する。

2)試験方法

試験方法
  1. 載荷装置、荷重計測装置および抜出し量測定装置をセットする。
  2. 載荷は、毎秒5~20 N/mm2 程度の載荷速度で、アンカーの軸方向に引張力を加える。
  3. 荷重計測と抜出し量測定は、同時に行い連続的に記録する。
  4. 試験終了後、破壊状況を写真により記録する。

試験装置例

油圧式(油圧ジャッキによる加力)

  • 油圧式試験装置

ロードセル式(レンチによる加力)

  • ロードセル式試験装置

計測装置構成例

計測装置構成例
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